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『日本人の底力』を聞いて 客人:さん

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本日の客人は、全国の大学の優れた授業を行う先生をビデオに撮影し続けている神奈川工科大学教授 遠山紘司(とおやま こうじ)さんでした。

今は、大学全入時代である。一流大学はさすがに競争が激しいが、どこかの大学には入れるいい時代である。しかしながら、今退学者がとても多いのである。半数は、大学の授業がわからないことが理由で退学している。高校できちんと勉強していないことが原因である。大学の先生は大変で、前と同じことをしていては授業にならない時代となった。

今、大学には同じ世代の60%が入る。また、専門学校に25%が入る。合わせると、同世代の85%が高校より上の学校に行く時代である。昔であれば大学へ行けなかった人が行けるようになったが、目的がない、または意欲がない学生が増えている。

入学試験の方法も昔とは違っている。高校からの推薦だけで入学できる推薦入試というのがある。自分はこういう特徴がある、というだけで入れるAO入試がある。学校によっては70~90%をAO入試で学生をとるところもある。

受験勉強もせずに入学すると、入ってから先生も困るし生徒も困ることになる。昔は生徒がある程度の学力レベルであった。生徒も先生の背中を見ながら、なんとか大学のレベルについてゆき勉強していた。しかし、今は、先生は生徒にどう理解させるか教え方の工夫をしなければならず、学生をどうやって乗せてゆくかも良く考えなければいけない。こういうことをしないと大学がうまくゆかない時代となってしまった。

大学の先生の仕事は研究と教育であるが、どうしても研究を大事にする傾向がある。10年くらい前に、これではまずいので授業を良くしようという動きが生まれた時代があり、このときに教育改善の旗振り役をやらされた。授業のあとに学生にアンケートをとり、改善点を指摘してもらって治してゆく方法を考えたが、生徒に指摘されてもどうやって治して良いかわからない先生が多かった。先生もプライドが高くいので、どうして良いか聞きにこない。そのため、授業アンケートをいつまでやっても改善されなかった。

そこで、教え方の上手な先生の授業を見て、そういった先生に接すれば何かわかるのではないか、と思い、ビデオを撮り始めた。しかし、自分の大学の中にそんなにいい授業はたくさんあるわけではなかった。ちょうどその時代に、新聞で各大学のベストティーチャーというものが発表され始めた。そこで、日本中のベストティーチャーを勉強してゆくのがよいのではないか、と思い、全国の良い授業のビデオを撮り続けている。今では100本くらいビデオが集まっている。

良い授業というのは、科目によって全然方法が違うため、これがベストとは言い切れるものではない。しかしながら、その分野ではこれというのはあるし、また共通して学生がやる気を出すであろう方法もある。

例えば、大阪大学での英語の授業を撮影したことがある。日野 信行先生であったが、すごい授業であった。毎年同じ内容を繰り返す先生が多いが、この英語の授業では、世界中で何が起こっているか衛星テレビから毎日題材を持ってきて議論するのである。毎日話題が変わるので、先生も何が出てくるかわからない。先生も大変だが、こういった授業は人気が出る。先生も学生も力が必要である。

このようなベストティーチャが全ての大学にいるわけではない。文部科学省は、学校によって先生や学生のレベルが違うことを知っており、学生を育てる方針について7つのカテゴリーを文部省が設定し、各大学に選択をせまり、目的に合った大学を作るようにしようとしている。

今日本全体で知識レベルはあがったが、大学の知識レベルは下がった状態にある。日本には770もの大学がある。全ての大学がトップレベルになることは有り得ない。

昔は高度成長の時代で、大学を卒業すればなんとか就職することができた。しかし、今は厳しい時代であり、1年生のときから4年生の就職を見こして勉強を始める。これは、普通の大学では当たり前のこととなっている。大学生には、就職を目指す人と自由に生きようとする人が混在しているが、それは学校ではわからない。

今はインターネットの時代であり、学生が自分で就職活動をして、面接して、勝手に落ちてくる。困った時にしか就職課にはこないのである。3つ4つ落ちると助けてください、と来る。

昔は中学、高校を卒業して就職する人が多く、勉強したい人が大学にきた。今は、皆大学に来て、そこから就職してゆくため、全てのしわ寄せが大学にきている。しかも、就職は大学の評判に係るので放って行くわけにもいかないのである。







噂には聞いていましたが、これほど大学が変わってしまったのか、という気持ちになりました。おそらく一流大学は違うのかもしれませんが、中堅レベル以下の大学では、少子化にともない学生の奪い合いが始まっていて、そのあおりで学力もどんどん低下しているようです。誰でも大学に入れるのはいいことだとは思いますが、そこから大学で学力をいかに伸ばすのか、遠山先生の研究に期待したいところです。本来研究に力を注ぐべき大学の先生が教育ばかりに熱心になるもの、ゆがみがあるように思います。ドクターの就職難という話も良く聞きますので、学生の教育を主とする教授と研究を主とする教授に分けるなど、ワークシェアも一案ではないかと、思いました。













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