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『日本人の底力』を聞いて 客人:長崎原爆被災者協議会会長 谷口稜曄さん

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本日の客人は、被爆者の実態と核兵器廃絶を訴え続けている長崎原爆被災者協議会会長の谷口稜曄(すみてる)さんでした。

昭和18年に郵便局に1945年(昭和20年)8月9日、爆心地から1.8kmの路上で郵便配達中に被爆した。自転車に乗っているときに、かすかに爆音が聞こえて振り向いた瞬間に4mくらいふっとばされた。その後地震のように地面が揺れた。気が付くと、左手が肩から手の先まで皮膚がただれて垂れ下がっていた。自転車は変形してめちゃくちゃだった。しかし、血もでないし痛みも感じなかった。背中は真っ赤に焼けただれていたが、6日間くらい血が出なかった。近くに兵器工場の女子寮があったが、男か女かわからないように顔がはれ上がった女性たちが、助けてくれと泣き叫んでいた。自分の中で安全な場所として確信のあった三菱兵器工場に向い、そこのトンネルで邪魔になった手の皮膚を切ってもらった。傷口には火傷に良いと思い、工業用油を塗った。ほこりだらけだった。そこで二晩過ごした。まわりは皆焼けただれた人々ばかりで、苦痛にのたうちまわって死んでいった。一夜で周りにいた人はみんな亡くなっていた。水をくれと言い、家族の名前を叫び、しかし家族に看取られることなく死んで行った。そこで二晩過ごした。雨の滴を飲んで過ごした。そんな中で米軍でも戦闘機が機銃掃射に来た。

1年9カ月たって起き上がれるようになり、3年7カ月たって病院を退院して長崎に戻った。郵便局に復活した。

その後、ノーモア長崎、ノーモア核という核廃絶運動に身を投じた。終戦後10年を過ぎた頃に、アメリカやソビエトで核兵器がどんどん作られたことを心配したのが理由だった。当時、講演会で「もうやめておけ!」という心ないヤジが飛んだこともあったが、これには「これはくやし涙なんだ!!」という話をしたこともある。

アメリカでは、背中が赤く焼きただれた写真で核廃絶を訴えた。講演会でスタンディングオベーションに包まれたこともあった。しかし、核はなくならない。被爆国の政府がしなければならないことをしないのが歯がゆい。被爆者は高齢化が進み、今では23万5千名しか残っていない。

長崎の3日前には、広島に原爆が落ちている。当時、広島に原爆が落ちたことは聞いていた。ビラが配られ、広島の新型爆弾には対策はないと書かれてあった。しかし、長崎に落ちることは考えてもみなかった。広島はウラニウム爆弾で、2発作って米国内で1発は実験をしている。長崎はプルトニウム爆弾という新しいものを使った。長崎は完全に実験だった。

人間、動物ともに生き続けられる世の中であってほしい。有名な科学者が核兵器の開発に参加していた。世界人類が争いを起こさずに生きて行ける社会であってほしい。核といっても生きては行けぬ、という人もいるが、金儲けだけでは世界は滅びてゆく。

歴代の首相は日米安保について、約60年間日本国民をだましてきた。日本は憲法で核をもたない戦争をしないといった。それを貫いてほしい。歴代の政府が米国と約束しているので、普天間は60年たっても解決していない。これは、民主党だけが悪いのではない。基地に膨大な金を使うなら国民のために使うべきだ。

世界が続く限り人類が続く限り核廃絶運動を続けてゆく。本来は、被爆国の日本政府が運動を続けてゆくべきだ。政府としてやってもらうことを願っている。個人がやることに文句をつけるのではなく、政府がやってゆくべき問題である。政府が続けてゆくことによって、若人たちが過去の事実を知って国民がそういう気持ちを持ち続けてゆくことができる。

NPT再検討会議は世界各国の注目を浴びている。しかし、アメリカのマスコミはあまり動いていないのは残念だ。世界の核廃絶運動は核保有国で盛んになってゆくだろう。保有国は5カ国しかないが、世界中で保有国が増えてゆくことが怖いからだ。







大学生の頃に、卒業旅行で九州を一周したことがありました。その時に、長崎で平和祈念館に立ち寄り、生まれて初めて戦争の悲惨さを実感しました。被爆後の写真がたくさん展示されていましたが、本当におぞましい光景で、20年以上たった今でも忘れることができません。その中で生き残った谷口さんが、責任感から核廃絶運動をされてきたのはとても理解できることですし、戦後核兵器が増えてゆく中でくやしい思いをしてきたことも想像できました。ラジオではありましたが、改めて爆心地の光景が脳裡に浮かんできて、戦争反対という気持ちが強く浮かんできました。

世界がパワーバランスの上で平和が保たれている今、核廃絶の進め方については十分な議論が必要です。しかし、核のない、そして戦争のない平和な世界がくることは、世界中の人々の願いですし、そういった方向に世界が動いていってほしいものだと思います。









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