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『日本人の底力』を聞いて 客人:法政大学教授 教育評論家 尾木直樹さん

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 法政大学教授で教育評論家の尾木直樹さんとのトークでした。


 日本は、子供の教育について国連から勧告を2回受けている。
 
 1998年6月に、日本の子供たちの状況があまりにも競争社会におかれて心身の発達によくない、との勧告を国連が日本に行った。孤独を感じる子供に関する調査結果によると、世界中で普通は5~10%の割合となるところが、日本は29%で一位である。国民が幸せを感じる度合いが高いオランダでは5%である。また、北大教授と文部省による子供のうつ病に関する調査によると、中学1年生の有病率10.7%とのこと。また、中学3年生では約3割が心を病んでいる。このままいっては日本は大変なことになる状況にある。
 
 2004年には、いまだに努力の跡が見られない、と国連から2回目のクレームを受けている。
 
 大学生がトイレでお昼ごはんを食べるという噂があった。都市伝説と思われていたが、学生にアンケートをとってみると実際に各大学に存在することがわかった。おそらく発生したのは、ここ2~3年の話である。法政大、早稲田大、東大の学生にアンケートをとったところ、約6割の学生が学食に一人ではいれないことがわかった。
 
 友達がいないことが下の下と位置付けてられていて、友達が楽しくしている学食に一人で入っていくことができないのである。
 
 今の学生は友達地獄という状況にある。友達と仲良くいなければならないという強迫観念がとても強い。一人でいるのがこわくて、友達がいないのがこわい。精神レベルが中学生程度であり、発達が遅れてしまっているのである。友達のことに異常な気遣いをする。授業中にも友達の意見に反論はできない。
 
 原因は、おそらく携帯依存症である。携帯を通した友達依存症であり、完全に病気である。24時間場所が離れていても友達とつながってしまうというバーチャルの友情である。表面的な友情に過ぎない場合もあり、真実の友情を体験できていない。
 
 いじめは件数が減っているように見えるが、携帯でいじめをしているため、両親にも学校の先生にも見えていないのである。昔は中学生に多かったが、今は高校生に多く、大学生にもいじめが蔓延している。昔のいじめっこは土日が元気になったが、今は日曜日も土曜日の夜も、どこかに旅行に行っていても死ね死ねというメールがくる。表情が見えないし、誰が送ってきたかもわからないので、面と向かって言われるよりも厳しいものがある。
 
 そんないじめにあっても携帯は止められないのである。携帯は友達との命綱となっている。
 
 最近は入学式に両親が必ず付いてくる。おじいさん、おばあさん、兄弟も付いてくることがある。会場に入れないので、東大も京大も親族の人数を二人に制限した。入学式を4回やった大学もある。ここ2、3年の話である。
 
 少子化の中、生き残りのため大学は商業主義となって消費者である学生、両親の言いなりになっている。早稲田大では保護者会をやるし、大学の教授と親との面談、親への就活もある。大学生が中学生レベルのままで社会に出てくるのである。
 
 日本の大学進学率は50%くらいである。先進国の中で日本の大学への進学率は低い。オランダ、フィンランドは国家の大学率の目標は100%としている。海外は習得主義であり、小学校3年生でも留年することがある。日本は学年主義であり、習得状況に関係なく進学できる。成績も個人ではなく地域の平均で見る傾向がある。日本の場合は九九や分数計算ができない子供も高校を卒業できてしまうのである。
 
先進国で大学無償化の方針がない先進国は日本くらい。諸外国では、大学が無償であるため60歳を過ぎてから大学に入って地域のために活躍することもできる。日本は、アメリカばかりを見てきたが、アメリカは教育に対して荒っぽい国であるため、教育について進んでいるヨーロッパに遅れてしまったと考えられる。




 
 
 
 大学生が中学生レベルになっているとの話、現実であればおそろしいことだと思います。しかし、若くして成功する起業家も輩出されてきていることから、実は一方的に幼稚化しているのではなく、学生のレベルが二極化しているということと理解しました。そういう私も人前が苦手な方なので、なんとなくトイレで食事をする学生の気持ちもわかる気がします。そういう人は、私の経験からすると自分に対する要求が高くて、友達に囲まれて過ごしたいという自分と、友達ができないという自分のギャップをどうすることもできずに立ちすくんでいる状況なのだと思います。
 
 友達と作るのが苦手な人が社会で苦労するということがあるかもしれませんが、それでも大学生となり専門性を持てれば、どこかに仕事を見つけて自分の居場所を確保できるはずです。苦手な友達作りを頑張ることも大事かもしれませんが、自分自身の性格と限界を見極めて、得意な分野に時間資源を集中するという戦略もありかな、と思います。光陰矢のごとし、時間はあっという間に過ぎてしまいます。得意な能力を伸ばし、そのような人を受け入れられるような懐の深い日本社会であってほしいものです。
 









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